し尿処理施設とは、し尿および浄化槽汚泥等を処理し、公共用水域へ放流するための施設のことです。バキュームカーなどし尿等が運び込まれます。
水質汚濁防止法に基づき、BOD、COD、窒素、リン、その他の規制基準が適用されます。
以下のような処理方式があります。
- 標脱(標準脱窒素処理)
- 初は二段活性汚泥法(低希釈法)と呼ばれ好気性処理法として開発された。5~10倍程度に希釈し、MLSSは6000程度で運転し、原則として加温はしない。硝化液循環法、ステップ脱窒素法、混合分解法などにわかれる。現在では浄化槽汚泥の増加に対応した運転管理により、希釈率は下げられる傾向にある。
- 高負荷(高負荷脱窒素処理方式)
- ほぼ無希釈でMLSSは12000~20000と高く取り、25~38℃に加温する。これにより、小さな水槽で処理しようとする方式で、施設ごとの特徴が強い。また、沈殿槽だけでは固液分離が不十分なので、さらに凝集分離を行っている。
- 膜分離(膜分離脱窒素処理方式)
- 主処理は高負荷法と同じだが、固液分離に膜ろ過装置を使用する。膜としては精密ろ過膜、限外ろ過膜が多い。
沈殿槽に代えて膜分離原水槽と生物処理膜分離装置をおき、そのろ液を凝集処理し、凝集処理膜分離装置で処理する。膜分離により安定した処理が可能で、病原体(特に微小病原体)を除去する能力も高い。ただし、沈殿槽などに比べると膜分離装置は管理にコストを要する。
- 浄化槽専用(浄化槽汚泥専用処理方式)
- 浄化槽汚泥を凝集沈殿処理して固液分離したのち、活性汚泥法で処理する。窒素除去の必要がない前提で適用されるが、ろ液を屎尿の主処理へ合流または下水道投入するなど、もし窒素濃度が高くても対応可能に設計するのが普通である。
- 嫌気(嫌気性消化)
- 嫌気性消化槽によりメタン発酵を行い、処理水を活性汚泥法(当初は散水ろ床法)で処理する。昭和30年代に普及した。窒素除去で劣るが、燃料が得られ汚泥性状も安定し肥料に適す事から、現在でも稼働している。
- 好気(好気性消化)
- 時間曝気により酸化分解し、さらに活性汚泥法で処理する。滞留日数は10日間とかなり長く取る。昭和40年代に普及した。施設が小さく臭気対策も容易だったが、曝気の電力費が最も高く、窒素の除去率も低い。また好気消化の汚泥は、当時普及しはじめた高分子凝集剤を使わないと脱水困難だった。
- 好一段
- 好気性消化処理のうち一段活性汚泥法処理方式。
- 好二段
- 好気性消化処理のうち二段活性汚泥法処理方式。
- 好希釈
- 好気性消化処理のうち希釈ばっき・活性汚泥法処理方式。
- 湿式酸化(湿式酸化・活性汚泥法処理方式)
- 水中燃焼法とも呼ばれる。高温高圧(7.8MPa、250℃)条件で空気中の酸素と反応させ、有機物を分解する。やはり後段に活性汚泥設備をおく。下水汚泥向けにアメリカで開発された処理法で、昭和40年代から50年代にかけて建設され施設は最も小さく効率が良かったが、運転の難易度が高くあまり普及しなかった。
- 焼却(焼却処理方式)